福山市議会議員 田口ゆうじ コミュニティマーブル

関わる全ての人を幸せにしたいが私の理念です。多くの人が関わり合って助け合いながら共同で街をつくっています。街づくりを通じて幸せを感じれる人生を築ければこれほど素敵な事はないです。皆さんと楽しみながらいい街をつくりたいと思ってます。そんな考えの私が街に関する事、面白い取り組みなどを発信していくブログです。どうぞよろしくお願いいたします。

【令和8年9月議会・予算特別委員会】令和8年度の補正予算を審査しました

【9月議会・予算特別委員会】令和8年度の補正予算を審査しました

こんにちは。福山市議会議員(誠友会)の田口裕司です。

 

9月定例会では、一般質問に加えて、予算特別委員会で令和8年度の補正予算(一般会計・第3号)を審査しました。

市民の皆さんの税金がどこに、どう使われるのかを一つひとつ確認する、大切な仕事です。

今回の補正予算の中身と、私が特に注目した点をご報告します。

 

 

 

 

補正予算の全体像

今回の補正は、一般会計に約8億9千万円を追加し、予算総額は約2,088億円となりました。

大きく二つに分かれます。

  • 本年6月の大雨による災害復旧(約6億5千万円)

  • 市民生活・福祉・子育てなどの充実(通常分 約2億4千万円)

 

 

6月の大雨からの復旧を最優先に

 

補正の大半は、6月の大雨で被災したため池・水路・農道などの農林水産施設と、道路・法面・橋りょうなどの土木施設の復旧です。

国の負担金や県の補助金といった有利な財源を確保しながら、被災箇所の早期復旧を図る内容です。

あわせて、ため池の遠隔監視システム(水位計や監視カメラ)を追加整備するための調査にも着手します。

「被害が起きてから対応する」から「事前に備える」防災へ

再発防止と管理体制の強化に取り組む姿勢を評価しています。

 

 

福祉の現場を、少しでも支える

 

 

私が一般質問でも訴えたのが、福祉現場の深刻な人材不足です。

今回の補正には、それに応える取り組みが盛り込まれました。

 

  • 障がい福祉施設へのICT機器・介護ロボットの導入支援(職員の負担軽減・生産性向上)

  • 認知症高齢者グループホーム等の防災改修への支援

 

限られた人手で利用者を支える現場にとって、こうした支援は前進です。

今後さらに広げていくよう求めていきます。

 

 

農業と福祉をつなぐ「農福連携」に注目

 

今回、私が特に注目したのが、地域資源を活かした「6次産業化」の取り組みです。

神辺町のいちご観光農園で、いちごジャムなどの加工品をつくる施設を整備する事業ですが、注目すべきはその中身です。

この事業は、社会福祉法人と連携し、農作業や加工品づくりを通じて、障がいのある方の就労の機会をつくるものです。

さらに、地域のカキ殻を肥料に使う資源循環にも取り組みます。

農業の担い手不足と、障がいのある方の就労

この二つの課題を同時に解決しうるのが「農福連携」です。

私が一般質問でも一貫して訴えてきた考え方であり、こうした具体的なモデルが福山で動き出すことを、心から歓迎しています。

 

 

若者に選ばれるまちへ

 

 

このほか、市外に転出した若者への意識調査(なぜ福山を離れるのか、何があれば戻るのかを分析)や、若者の居場所であるユースセンター「ふらっと」の体制強化なども盛り込まれました。

「ふらっと」では、通うのが少ししんどかった若者が、やがてボランティアとして活躍する

そんな温かい変化も生まれていると聞いています。

 

おわりに

 

今回の補正予算は、災害からの早期復旧を軸に、福祉・子育て・地域経済の充実に配慮された、時宜を得た内容でした。

誠友会として、賛成の立場を表明しました。

 

一つひとつの予算が、被災された方の暮らしの再建や、支援を必要とする方の安心につながるよう、これからもしっかりチェックし、現場の声を届けてまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

【令和8年9月定例会】一般質問でどんな議論があったか ― 主な論点のまとめ

【9月定例会】一般質問でどんな議論があったか ― 主な論点のまとめ

こんにちは。

福山市議会議員の田口裕司です。

 

9月定例会の本会議では、多くの議員が一般質問に立ち、市政の幅広いテーマが議論されました。

市民の皆さんに「いま福山市でどんな課題が議論され、市はどう答えたのか」を知っていただきたく、テーマごとに主な内容をまとめてご報告します。

(個々の発言者名は伏せ、論点と市の考え方を中心に紹介します。数値は議場での答弁等に基づきますが、正確な数字は市の公表資料をご確認ください)。

 

 

 

 


 

1. 防災・災害対応

今年は熊本の地震や各地の豪雨災害が相次ぎ、災害への備えが大きなテーマになりました。

  • 被災地支援:本市から熊本・能登へ、給水・住家被害認定調査・避難所運営などの職員派遣を継続。派遣職員の熱中症対策(空調服)や、帰任後のストレスチェックなど、支援する職員のケアも議論されました。

  • 車中泊避難:地震や豪雨では、プライバシーや子ども・ペットの事情から車中泊を選ぶ人が多く出ます。市は公式LINEで在宅・車中泊の避難者を登録し支援につなぐ仕組みを整備。広域避難場所に車中泊スペース(例:福山城公園で約290台)を確保。エコノミークラス症候群など健康リスクの周知も。

  • 避難所の空調:市が指定する避難所257施設のうち、空調があるのは49施設。体育館の空調は令和11年度までに整備予定で、それまではスポットクーラーや空調のある教室で対応。

  • 災害時のトイレ:携帯トイレの備蓄(1人1日5回×3日分)、マンホールトイレ(現在68基、今後さらに整備)、要配慮者用トイレの配慮。

  • 災害廃棄物:法改正を受け、市の処理計画を今年度中に見直し。仮置き場の設営訓練や市民への分別周知。

  • 物資のラストワンマイル:備蓄だけでなく「必要な人に確実に届ける」ため、物流拠点の2拠点化、物流事業者との連携訓練、ドローン活用。

  • 地域防災力:防災リーダー(約80人)や大学生・企業の力を地域の枠を超えて活かす取り組み。

 


 

2. 障がい者施策

来年度から始まる次期「障がい者プラン」の策定を踏まえ、障がいのある方への支援が議論されました(私自身もこのテーマで登壇しました)。

  • 重度障がいの方の受け皿:医療的ケアや強度行動障がいのある方のうち、施設やグループホームを使わず在宅で暮らす方が「およそ500名」。ご家族の高齢化・「親亡き後」を見据え、短期入所や重度対応の住まいの整備が課題。市は「空床利用型」を県と連携して医療機関等に提案し、次期計画で事業所数や医療的ケア児コーディネーターの配置数を数値目標化する方向と答えました。

  • 相談支援体制:障がいの中核的な相談窓口(基幹相談支援センター)は市内1か所。高齢者の地域包括支援センターが学区単位で約25か所あるのと比べ手薄で、相談員の確保・定着、身近な相談体制の必要性が議論されました。たん吸引等ができる介護職員(認定特定行為業務従事者)の養成など、人材確保も論点に。

  • 障がい者の就労:法定雇用率が2.7%へ引き上げられ、企業への支援が必要。市役所自身の障害者雇用率は3.05%(法定達成)。

  • 共生型サービス:人口減少地域で高齢・障がい・子どもを一体で支える複合的な施設(共生型)の活用。

 


 

3. 保育・子育て

  • 保育料の見直し:第1子の保育料を平均約45%引き下げ(令和9年4月から)。一方、放課後児童クラブの利用料は段階的に引き上げ(まず3,000円→5,000円)、3人目以降の無償化など。

  • 待機児童:4年連続ゼロを継続。ただし特定施設を希望した「未決定」は一定数。

  • 保育現場のハラスメント(カスハラ)対策:10月から事業主に防止措置が義務化。市はカスハラ対応マニュアルを全保育施設に配布済み。相談の集計(保護者対応に関する相談など)はあるが、カスハラを独立した類型で把握する仕組みや録音による抑止などが議論されました。

  • 子ども性暴力防止法(日本版DBS):令和8年12月25日施行。保育・児童福祉・障害児支援などで、従事者の性犯罪歴確認などの準備が進められています。

  • 療育(発達支援)と仕事の両立:障がいのある子の療育に通わせたくても、保護者が仕事を休めず通えない/退職せざるを得ないという声。休暇の取りやすさや、企業への「療育のための休暇」の理解促進が議論されました。

  • 子どもの居場所:夏休みの図書館・拠点支所などでの居場所づくり、交流館のキッズスペース拡充、ユースセンター「フラット」、子育て支援ボランティア。児童館的機能を地域に広げるあり方も論点に。

 


 

4. 教育

  • 学力:全国学力・学習状況調査で、小学校が7年ぶりに国語・算数とも全国平均を上回り、中学校も全国平均との差が近年最小に。家庭学習の定着や授業改善、若手教員の育成(メンター研修)、英語力向上などが議論されました。

  • 不登校・子どもの自殺対策:子どもの自殺が全国で過去最多。心の健康観察(1人1台端末)、ゲートキーパー研修、スクールソーシャルワーカーの配置、家庭との連携のあり方が議論されました。

  • 教職員の働き方改革:在校等時間は減少傾向とする市に対し、現場の「持ち帰り仕事」「実感が乏しい」との声。業務の見直しや協議体制の強化。

  • 特別支援教育:特別支援学級が10年で182学級増え、今年度500学級(自閉症・情緒障害の増加が顕著)。通級指導は642人・31教室。担当教員の専門性(免許保有率)向上や、他校通級に伴う保護者の送迎負担、小1からの通級利用などが論点に。

  • 5歳児健診:発達の特性を早期に把握する5歳児健診を令和9年度に本格実施へ。就学先決定までの期間確保や、児童発達支援センターでの発達検査の待ち時間が課題。

  • 図書館・学校図書館:市立図書館の貸出は中核市でも上位(1人当たり約5冊)。学校図書館補助員50人の配置、司書教諭の配置、地域や企業との連携、図書館が外に出ていく取り組みなどが議論されました。

  • 学校トイレのプライバシー:入口からの目線や間仕切りの課題と、改善の方向性。

 


 

5. 子ども・若者/ひきこもり

  • ひきこもり支援:市内の若年層の推計は約2,348人。相談につながらない方の実態把握、居場所「フラット」やAIチャット相談の導入、家族交流会の充実、当事者の思いに寄り添う伴走支援が議論されました。

  • 若者に選ばれるまちづくり:市外に出た若者の声の把握、企業や地域との接点づくり、若者自身が関われる場、情報の届け方(ターゲット別)などが議論されました。

 


 

6. まちづくり・地域

  • 人口減少への対応:本市の人口は令和22年に約41万人へと推計。「人口減少を抑える」取り組みと「減っても暮らしを守る」取り組みを両輪で。都市の将来像として、拠点を公共交通でつなぐ「多極ネットワーク型コンパクトシティ」。

  • 地域の拠点づくり:「まちづくりネット」(自治会連合会など8団体で構成)や「まちテラス」を中心とした新しい地域支援体制、各地域の成果の横展開、アウトリーチの必要性。

  • 大学・若者との連携:松永駅北での大学と市の連携プロジェクトなど、学生が地域に入り街づくりに関わる取り組み。

  • 駅周辺のまちづくり:福山駅前の賑わい再生、伏見町地区の権利者による勉強会。

  • 市街化調整区域・周辺地域:買い物・通院・移動手段(乗合・オンデマンド交通)など、周辺地域の暮らしをどう守るか。

 


 

7. 産業・観光・財源

  • 産業振興:第2期産業振興アクションプラン、半導体関連産業クラスターの形成、従業者1人当たり付加価値額の向上。

  • ものづくり人材:人材の確保・定着・技能継承が課題。国・県の「マイスター」制度の活用、市独自のマイスター顕彰の提案。

  • 若者・女性に選ばれる企業づくり:官民共同会議を設置し、働きがい・働きやすさの観点から企業文化の変革を支援。

  • 観光:昨年の観光消費額は約450億円で過去最高。福山城築城405年やバラを活かし、周遊・宿泊・リピーター・関係人口の拡大。クルーズ船(鞆の浦への寄港)の誘致。

  • ふるさと納税:本市の寄付受入は令和7年度で約3億円。一方で市民税の流出もあり、募集経費の効率化や返礼品の充実が議論されました。企業版ふるさと納税(昨年度52件と過去最多)や、地域の地場産業を支える拠点の今後も論点に。

 


 

8. 健康・医療・福祉・人権

  • 安心して出産できる医療体制:分娩を取り扱う医師・医療機関の減少(本市の分娩取扱機関は減少後、支援策で回復傾向)。福山市民病院の周産期母子医療センターの機能強化など、少子化対策の土台としての医療体制が議論されました。

  • 健康づくり:骨粗しょう症の予防・検診(受診率の向上)、若い世代から将来の健康やライフプランを考える「プレコンセプションケア」(5年で200人以上のサポーター養成目標)。

  • 高齢者福祉・介護:要介護・要支援認定者は約3万人。地域包括支援センターや権利擁護の体制。

  • 人権行政:部署の再編と名称、人権政策基本方針に基づく取り組み(意識向上・権利擁護・まちづくりへの参加)。

  • 性的マイノリティ・パートナーシップ制度:職場や住まい、制度利用での困りごとと、当事者に寄り添う取り組み。

  • 結婚支援:AIマッチングやコーディネーターによる相談支援の導入。

 


 

9. 環境

  • PFAS(有機フッ素化合物)対策:河川などのモニタリングで高い数値が続く状況を受け、排出源の特定、住民の健康への不安、国への規制・支援の要望などが議論されました。市は国の科学的知見や除去技術の確立を待ちつつ、定期的なモニタリングを続ける考えを示しました。

 


 

10. 行政運営・その他

  • 自治体システムの標準化:国が進める全国統一システムへの移行(20業務中13業務が完了、残りは令和10年度末まで)。運用経費の増加や、帳票が和暦のみ・字が小さいといった市民の声への対応が議論されました。

  • 公契約条例:市が発注する工事などで、働く人に適正な賃金が届く仕組みづくり。

  • 空き家対策:危険な空き家の減少(調査で935件へ)、相談会や管理活用支援法人の活用、相続登記の促進。

  • PTA・学校運営:PTAと学校の関係、PTA会費と学校運営費の整理。

  • 予備自衛官と兼業特例法:自治体職員への影響をめぐる議論。

 


 

おわりに

9月定例会では、防災、福祉、子育て・教育、産業・観光、行政運営まで、市民生活に直結する幅広いテーマが議論されました。

私自身は障がい者施策と保育現場の課題を中心に質問しましたが、他の議員の質問からも多くの学びがありました。

一つひとつの議論を、次の政策や市民の皆さんの暮らしの改善につなげられるよう、これからも現場の声を大切に、取り組んでまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【9月議会】障がい者施策と保育現場の課題について

【9月議会】障がい者施策と保育現場の課題について一般質問を行いました

 

 

 

こんにちは。

福山市議会議員(誠友会)の田口裕司です。

令和8年9月定例会の本会議で、一般質問に立たせていただきました。

今回のテーマは、障がいのある方への支援と、保育の現場を守る取り組みです。

質問の準備にあたっては、実際にいくつかの障がい者施設やグループホームを見学し、そこで働く支援員の方、事業者の皆さん、そして保育の現場の方から、直接お話をうかがいました。机の上の資料だけではわからない「現場のリアル」を、できる限り議場に持ち込むことを心がけました。少し長くなりますが、当日のやり取りをご報告します。

 

 

 

 

なぜ、いま障がい者施策なのか

 

 福山市の「障がい者プラン」、そして「障害福祉計画」は、いずれも今年度が計画期間の最終年度です。

 来年度(令和9年度)から始まる次の6年間の計画を、いま市が策定しています。

 国も今年3月に、相談体制の強化や重度障がいへの支援など、これまでより踏み込んだ新しい「基本指針」を示しました。

 福山の次期計画は、この見直しを受け止める最初の計画になります。

 一方で、市民アンケートでは「福山市は障がい者にとって暮らしやすいと思う」と答えた方はわずか14.1%にとどまっています。

 だからこそ私は、次期計画を「絵に描いた餅」にしないために、就労・重度支援・地域生活といった具体策を、今のタイミングで問う必要があると考えました。

 そしてもう一つ、質問全体を貫く私の考えがあります。障がい福祉は、サービスの基準や報酬など国の制度で決まる部分が大きく、市にできることには限りがあります。「それは国の制度なので」という答弁も、正直、少なくありません。

 けれど、「福山の現場で今なにが起きているか」を一番よく把握できるのは、市自身のはずです。

 福山市は中核市として、事業所の指定や指導監査の権限という大きな権限を持っています。

 だからこそ、現場をしっかり把握し、必要なら国にも声を上げていく、そういう立場で臨みました。

 

 

重い障がいのある方の「受け皿」と「親亡き後」

 

 

 医療的ケアや強い支援を必要とする方を支える短期入所や生活介護は、ご家族のレスパイト(一時的な休息)や、緊急時の受け皿として欠かせません。

 ところが、国の調査でも短期入所は経営的に厳しく、構造的に担い手が限られる分野です。

 まず私は、市内で重症心身障がいや強度行動障がいのある方のうち、施設やグループホームを使わず「在宅」で暮らしている方が何人おられるかを尋ねました。

 市からは「およそ500名」という答弁がありました。

 この方々の暮らしの多くは、ご家族の介護で成り立っています。

 ご家族の高齢化、いわゆる「8050問題」、そして「親亡き後」を考えれば、いま手を打たなければなりません。

 再質問では、この500名の内訳(重症心身と強度行動それぞれ何人か)や、親亡き後に受け入れる体制をどう位置づけるのかを重ねて問いました。

 市からは、短期入所を増やすため、開設を検討する医療機関などに対し、本体施設と一体で運用する「空床利用型」を、県と連携して提案していること、そして次期計画では、重症心身障がいの方を支援する事業所数や、医療的ケア児コーディネーターの配置数を「数値目標」として設定する方向である、との答弁を得ました。

 「検討する」で終わりがちな中で、測れる目標を置く方向にまで踏み込ませたことは、一つの前進だと受け止めています。

 

 

相談の「入口」が、市内に1か所でよいのか

 

 

 障がい福祉サービスは、まず相談につながることから始まります。

 その中核を担うのが基幹相談支援センターです。

 総合的な相談に加え、市内の相談支援事業所を指導・育成し、困難なケースを支える「最後の砦」です。

 ここで、私は高齢者福祉と比べてみました。

 高齢者には、身近に相談できる地域包括支援センターが、学区単位で市内に整備されています。

 ところが、障がいの基幹相談支援センターは、市内にたった1か所(クローバー)だけです。

 数字で見ても、この差は際立ちます。

 市の資料では、福山市の要介護・要支援の認定者は約2万9,962人。

 これに対し、障がい者手帳をお持ちの方は約2万6,624人と、支援を必要とする方の規模はほぼ近い。

 それなのに、高齢者は身近に25か所、障がいは市域でわずか1か所。

 これでは、地域で困っている方の声を広く拾うには足りないと言わざるを得ません。

 しかも障がいは、身体・知的・精神に加え、医療的ケアや強度行動障がいなど、必要な専門性が分野ごとにまったく異なります。

 実際に相談員さんからは「一人ですべての障がいに対応できる状態ではない」「精神障がいは“これが答え”というものがなく、手探りだ」という声を聞きました。

 それを束ねる基幹が1か所では、支えきれません。

 福山でも相談員さんが自分で計画を作れず、本人・家族が作る「セルフプラン」の割合が、成人で19.9%、障がい児では40.9%(うち児童発達支援では78.6%)と、全国平均より高い状況です。

 これは、専門の相談員が足りていないことの裏返しでもあります。

 そこで私は、市内5つのブロックに分かれている相談員の連絡会を活かし、各支所の福祉部門に相談員を配置する、地域包括支援センターに障がい担当の専門員を育てる、地域を回っておられる民生委員さんと情報を共有する場をつくる

 こうした「身近な相談体制」への具体策を提案しました。

 市も課題は認識しており、引き続き求めていきます。

 

 

「たん吸引」ができる人を増やせば、受け入れられる場所が増える

 

 

 施設を回るなかで、最も切実に聞いたのが「看護師が足りず、来てくれない」という声でした。

 医療的ケア(たんの吸引や経管栄養)が必要な方は、看護師がいなければ受け入れられない

 それが受け皿が広がらない大きな原因の一つです。

 実は、研修を受ければ、介護職員や保育・学校の職員などが、医師の指示と看護師との連携のもとで、たん吸引などを担える「認定特定行為業務従事者」という仕組みがあります。

 この資格を持つ人が増えるだけで、短期入所や施設の受け入れの幅が広がります。

 ところが、その研修を受けられる場が身近にないのです。

 県内の登録機関は55か所、福山にも18か所ありますが、その多くは自分の法人の職員向けに実施しているだけで、一般に公募されていない。

 「受けたいのに受けられない」という事業者の声を、そのまま議場で伝えました。

 市に対しては、こうした法人が一般向けにも講習を開けるか確認し、周知するなど、受講しやすい環境づくりを後押しするよう求めました。

 

 

保育の現場を守る ― カスタマーハラスメント対策

 

 

 保護者などからの過度な要求や暴言に、保育士さんが精神的に追い詰められる。

 実際に、市内の保育所に勤める職員の方から、そうした相談が私のもとにも寄せられました。

 これは福山だけの問題ではありません。

 厚生労働省の調査では、カスタマーハラスメントの相談があったと答えた企業の割合は27.9%に増加し、業種別では「医療・福祉」が53.9%と全業種で最も高い。

 対人援助の現場に負担が集中している実態が示されています。

 そして10月1日から、事業主にハラスメント防止の措置が初めて義務づけられます。   

 市も、保育所を運営する事業主として、この義務を負います。

 市からは、すでにカスハラ対応マニュアルを作成し、市内の全ての保育施設に配布したこと、公立保育所で「カスハラ」として把握している事案は1件、との答弁がありました。

 マニュアルの整備は前進です。

 ただ、把握が1件というのは、「何がカスハラか」を切り分けて集計できていないからではないか、と私は考えます。

 そこで、二つ提案しました。

 一つは、保護者からのハラスメントを、匿名で報告・集計できる仕組みをつくること。

 声を上げた保育士さんが特定されない形でなければ、実態はつかめません。

 もう一つは、「抑止」の具体策です。

 電話の受付で「記録のため通話を録音します」と自動音声で伝える、話し合いの場でも「記録として録音させていただきます」とルールとして伝える。

 これだけでも、大きな抑止になります。

 本当に必要な要望であれば、冷静に伝えていただければよいのです。

 市民サービスを担う職員が守られ、伸びやかに保育に向き合える環境をつくることが、めぐりめぐって子どもたちのためになる。

 市長が掲げる「現場主義」で、職員の声にも耳を傾けてほしいと求めました。

 

 

人口が減っても、暮らしを守るために ― 共生型サービス

 

 

 金江・沼隈・新市といった周辺の地域では、これから高齢者も子どもも、さらに減っていきます。

 高齢・障がい・子ども、それぞれ単独では、事業所が成り立たなくなる恐れがあります。

 だからこそ、これらを一つの拠点に束ねる「共生型サービス」が現実的な答えになります。

 富山県で生まれた「富山型デイサービス」のように、高齢者も、障がいのある方も、子どもも、分け隔てなく同じ場所で過ごす。

 そうした複合的な施設づくりを進める自治体も出てきています。

 私は、市が「活用を検討する」で終わらせず、モデル地区を定めて、事業者と一緒に理想の形を考え、伴走しながら後押しするよう求めました。

 介護と障がいの二重の手続きや、改修費、人材、場所の確保といった壁を、市が下げていく。

 国の「重層的支援体制整備事業」なども活かせるはずです。

 

 

私が大切にした一点 ― 監査を「チェック」から「伴走」へ

 

 最後に、質問を通して私がこだわった点をお伝えします。

 市が事業所に関わる主な手段は「運営指導・監査」です。

 市に確認したところ、この監査は年間およそ200件、各事業所には3〜6年に1回、1件あたり約3時間で行われています。限られた人員のなか、職員の皆さんは本当に大変な思いで取り組まれています。

 ただ、わずか3時間で書類や請求の確認をすれば、「その支援が本当に利用者に合っているか」まで踏み込む余裕は、ほとんどありません。

 せっかく現場に足を運んでいるのに、書類のチェックで終わってしまう。

 私はここに、大きな“もったいなさ”を感じました。

 だから提案しました。

 デジタル化やAIで簡易にできるチェックはそちらに任せ、職員が現場で「支援員がどんな思いで、どんな課題を抱えて利用者と向き合っているか」を知る。

 市民にサービスを届けているのは、別の組織ではなく、同じ地域で働く仲間です。

 その方々がやりがいを持って働ける環境をつくることが、めぐりめぐって市民サービスの質を高めます。

 「チェックする市」から、現場に寄り添い、一緒に良くしていく“伴走する市”へ——この視点を、これからも訴えていきます。

 

 

これからも取り組みます

 

 今回、重度支援の数値目標化の方向、空床利用型の後押し、カスハラ対応マニュアルの全園配布など、いくつもの前進を確認できました。

 一方で、相談体制の身近な整備、たん吸引ができる人材の養成、カスハラの“見える化”などは、まだ「検討」「認識」の段階です。

 支援を必要とする方とそのご家族、そして現場で支える職員の皆さんの声を聞きながら、次期計画にしっかり反映されるよう、12月議会以降も、粘り強く取り組んでまいります。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご意見・ご相談は、いつでもお気軽にお寄せください。

「壊すにも、金がかかる」 飯塚市で見た、縮小時代のまちづくりの覚悟

「壊すにも、金がかかる」― 飯塚市で見た、縮小時代のまちづくりの覚悟

 

 

 

こんにちは、田口ゆうじです。

総務委員会の視察最終日は、福岡県飯塚市を訪れました。

テーマは「公共施設等総合管理計画について」

正直、この分野は数字ばかりで地味に映りがちです。

けれど実際に話を伺ってみると、そこにはこれからの福山にとっても決して他人事ではない、切実な現実が詰まっていました。

飯塚市は、かつて筑豊炭田の中心地として日本の近代化を支えた「炭都」です。

最盛期には人口およそ20万人。

それが現在は約12万4千人と、ピーク時から4割近くも減っています。

ところが、街の骨格——道路や上下水道、公共施設といったインフラの規模は、20万人がいた時代のまま、ほぼ手つかずで残っている

この「体に対して大きすぎる服」を、どう着こなすか。それが飯塚市の、いま向き合っている課題でした。

 

 

一人あたりの床面積は、全国平均の1.8倍

 

 

まず伺って驚いたのが、市民一人あたりの公共施設の延床面積が、全国平均の1.8倍、似た規模の自治体と比べても1.4倍にのぼるという数字です。

炭鉱で栄えていた頃、増え続ける労働者とそのご家族のために、短期間で一気にインフラを整備した歴史があるそうです。

当時としては当然の投資だったのでしょう。しかし人口が減った今、それがそのまま行政コストの重荷として跳ね返ってきている。

今後30年間の維持・更新費用は、約5,365億円

年平均にすると約178億円とのことでした。

この金額を聞いたとき、私の頭に真っ先に浮かんだのはこの費用が、そのまま教育や福祉、子育て支援に回っていたはずだ、ということです。

過去の繁栄の証が、今を生きる子どもたちの予算を、静かに圧迫している。

先人が遺してくださったものを、どう次の世代につないでいくのか。

この問いは、決して簡単ではありません。

 

 

「壊す」ことすら、簡単ではない現実

 

 

「使わなくなった施設は、壊せばいいだけではないか」

恥ずかしながら、私自身も以前はどこかでそう単純に考えていました。

しかし、飯塚市のお話を聞いて、認識を改めさせられました。

まず、解体費用そのものが年々高騰しています。

加えて国のルールとして、補助金や市債を使って建てた施設は、廃止から5年以内に解体を終えなければ、借金を一括で返済しなければならない場合があるというのです。

担当の方が、解体費用の高騰が今かなりの重荷になっていると、率直に語ってくださったのが印象に残りました。

 

「予算がないから、しばらく放っておく」という選択肢そのものが、許されない。 

壊すために、また新たな財源を用意しなければならない。

建てる時以上に、去り際にこそ、知恵とお金が要る。 

この逆説には、うなずくしかありませんでした。

 

 

公営住宅という、動かせない3割

 

 

飯塚市の公共施設のうち、面積で最大を占めるのが公営住宅で、全体の約33%

学校施設の約30%と合わせると、この二つだけで市全体の6割を超えるそうです。

中でも公営住宅の再編は、一筋縄ではいきません。

建物の多くは昭和40年代に建てられた老朽施設で、本来なら集約や統合を進めるべき時期を迎えています。

しかしそこには、長年その場所で暮らしてこられた方々の生活があります。

「住み慣れた場所を離れたくない」という高齢の入居者の思いに、行政が強く出ることはできません。

全体の3割を占める大きな資産が、住まいを守るという当然の配慮のもとで、身動きが取れずにいる。

数字だけでは決して語れない難しさを、改めて感じさせられました。

 

 

930施設に「通信簿」をつける

 

こうした状況に対して、飯塚市がまず取り組んだのが、市が管理する930の施設すべてを対象に、劣化状況をA〜Dの4段階で評価する「施設カルテ」の導入でした。

感覚や慣例に頼るのではなく、まず現状を、数字と客観的な基準で正しく把握する。

 この地道な作業から始めている姿勢に、強く共感しました。

私が山に入るときも、まずは一本ずつ木の状態を見て回るところから始めます。

現場を正確に知らずして、正しい判断はできません。

直近の診断では、以前の調査と比べて全体の評価が下がり、老朽化が加速していることが裏付けられたそうです。

それを受けて、壊れてから直す「事後保全」から、壊れる前に手を打って寿命を延ばす「予防保全」へと転換を進めている。

そのうえで、次の4つの柱でダウンサイジングを進めているとのことでした。

  • 市民参加のアンケートなどで、重要度・満足度を可視化すること
  • 複合化・多機能化によって、施設の総量そのものを抑えること
  • 長寿命化改修で、将来の更新費用の波を平らにならすこと
  • 廃止後の跡地を、早期に民間の手に委ねていくこと

これまでに約19,000平方メートルを削減したものの、当初の目標にはまだ届いていない——そんな正直な現状説明も、かえって信頼できると感じました。

これは、森の間伐とまったく同じだと思いました。

木を減らすことは、一見すると後ろ向きな作業に見えます。

けれど混みすぎた森は、光が届かず、土が痩せ、やがて全体が弱っていく。

あえて減らすことでしか、残るものを活かせない。

 縮小は「敗北」ではなく、次の世代へ健全な形で渡すための、前向きな選択なのです。

 

 

「負の遺産」を「地域の資産」に変えた事例

 

 

一方で、民間の力を借りて見事に再生した施設の話も伺いました。

かつて公務員向けの宿泊・宴会施設だった建物を、設計・建設・運営を一体で民間に任せるDBO方式によって、テニスを中心としたスポーツリゾートへと生まれ変わらせた事例です。

今では国際大会の開催地にもなり、しかも民間事業者が独立採算で運営するため、市が毎年指定管理料を払い続ける必要がないといいます。

行政だけでは維持できなかった施設が、官民連携の枠組みによって、負担ゼロで市民に価値を届ける場所へと変わった。

福山でも十分に参考になる発想だと感じました。

 

 

福山に持ち帰りたいこと

 

 

飯塚市のお話を伺いながら、私は何度も福山市のことを思い浮かべていました。

福山もこれから、人口減少と施設の老朽化という同じ課題に、否応なく向き合っていくことになります。

古い施設をこれまでと同じように維持し続けることは、その分だけ、子どもたちの教育やこれからの福祉に使えるはずのお金を、先に食べてしまっているということです。

かといって、そこに暮らし、通い、集ってこられた方々の思いを無視して、数字だけで統廃合を進めるわけにはいきません。

「ハコ」を守るのか、市民の「暮らし」を守るのか。

 その優先順位を、一つひとつ丁寧に見極めていく必要があります。

飯塚市が930施設すべてに向き合い、地道にデータを積み上げてきたように、福山でもまず現状を正しく知ることから、着実に始めたいと思います。

先人が築いてくださったものに感謝しながら、次の世代に渡せる形へと整えていく。

今回の視察で得た学びを、今後の議会活動にしっかり生かしてまいります。

 

「壊すしかない」を疑う  八代市の空き家バンクで見た、地域資産の掘り起こし方

「壊すしかない」を疑う ― 八代市の空き家バンクで見た、地域資産の掘り起こし方

 

 

こんにちは、田口ゆうじです。

総務委員会の視察で、熊本県八代市を訪れてきました。

テーマは「移住・定住につなげる空き家バンクについて」

全国の自治体からも注目を集めているという八代市の取り組みを、住宅課の職員の方から詳しく伺ってきました。

正直に申し上げると、視察前の私は「空き家バンク」と聞いて、よくある物件情報の掲示板のようなものを想像していました。と

ころが話を伺ううちに、そこには所有者の心の動きにまで丁寧に寄り添った、驚くほど緻密な仕組みがあることが分かってきたのです。

 

 

 

 

「古い家=壊すしかない」は、思い込みだった

 

 

一番驚いたのは、令和3年度に八代市が行った実態調査の結果です。

市内の空き家2,468戸を4段階で評価したところ、空き家バンクに登録できる水準の物件が、なんと82.7%にのぼったというのです。

私たちはつい、古い家というだけで「もう使い物にならない」と決めつけてしまいます。

ところが実際には、8割以上の空き家が、まだ十分に住める状態だった

しかもそれを、市が推測ではなく数字で押さえている。この一点に、まず唸らされました。

その裏側にあるのは、地道な現場仕事です。住宅課の職員が2名一組で現地に赴き、屋根や基礎、床下といった構造から、水道・ガス・電気、さらにはエアコンの動作まで、一つひとつ確認していく。

「古いから」ではなく、「まだ使えるかどうか」を、自分の目で見極める。

これは、山や畑と向き合う私にはよく分かる感覚です。

荒れて見える森でも、実際に入って一本ずつ確かめれば、まだ十分に活かせる木がたくさんある。

現場に足を運ばなければ、本当の価値は分からないのです。

この積み重ねが、所有者の背中を押す信頼につながっているのだと感じました。

 

 

行政は「仲介」をしない、という潔さ

 

もう一つ印象に残ったのが、成約率81.1%という数字を支える仕組みです。

八代市の空き家バンクは、行政がすべてを抱え込もうとしません。

市の役割は、あくまで物件情報の掘り起こしと、所有者と利用希望者を引き合わせる「場づくり」まで。

実際の契約交渉や取引の実務は、地元の宅地建物取引業協会と協定を結び、民間の専門家に委ねているのです。

これは「行政の手が回らないから」ではありません。

むしろ逆で、民間のプロに任せた方が、取引の安全性もスムーズさも高まるという判断でした。

行政が前面に出すぎず、餅は餅屋に任せる。

この線引きの潔さが、結果として制度全体への信頼を支えている。

リーダーの仕事は、自分が全部やることではなく、それぞれが力を発揮できる場をつくること

地域の活動でも同じことを痛感してきただけに、深くうなずきました。

 

 

「恥じらい」への処方箋、という発想

 

 

支援策の中でも、特に感心したのが「不用物撤去補助金」です。

上限5万円のこの補助金、通常であれば契約が成立してから使えるものです。

ところが八代市では、物件を登録する前の段階でも利用できるようにしているといいます。

「家の中が荷物だらけで、とても人様にお見せできる状態じゃない」そう感じて登録をためらう所有者は、決して少なくないはずです。

片付けにお金と手間がかかるからこそ、二の足を踏んでしまう。

この、いわば「恥じらい」のような心理的なハードルにまで目を配り、先に片付けの支援をしてしまう。

この発想には、正直、脱帽しました。

制度というのは、条件を整えるだけでは動かない。

人の気持ちの動き方まで考えて、初めて機能する。 

私がいつも「一対一で人と向き合う」ことを大切にしているのも、結局は同じことなのだと、改めて教えられた思いです。

このほかにも、改修工事費に最大40万円、市外からの移住者向けの引越し費用に最大5万円と、実際に手を動かす段階でつまずかないよう、支援が手厚く用意されていました。

 

 

手放したい人と、暮らしたい人をつなぐ

 

 

登録物件のおよそ9割が「売買」だという話も、考えさせられました。

管理の負担や、将来の相続を考えると、賃貸として持ち続けるより、いっそ手放したいと考える所有者が多いのだと思います。

空き家バンクは、そうした方々にとって現実的な「出口」にもなっているのですね。

一方、物件を探す側には、360度カメラによるVR内覧を導入するなど、遠方からでも安心して検討できる工夫が進んでいました。

県外の移住希望者と物件との距離を、こうした技術で縮めていく。

人口減少の時代に、欠かせない視点だと感じます。

 

 

「壊す」から「活かす」へ、国も舵を切っている

 

 

伺った話の中で、もう一つ心に残ったのが、国の空き家対策そのものが大きく変わりつつあるという点です。

これまでは、危険な空き家を「壊す」ための支援に重きが置かれてきました。しかし今は、空き家の発生そのものを抑え、「活かす」方向へ軸足が移っているそうです。

八代市の取り組みは、まさにその流れの先を行くものでした。

 

福山に持ち帰りたいこと

 

 

福山市でも、空き家は決して他人事ではありません。

人口減少と高齢化が進む中、「実家が空き家になってしまった」というご相談は、これから確実に増えていくはずです。

八代市の取り組みが教えてくれたのは、空き家問題の本質は、建物の古さではないということでした。

本当の壁は、所有者の心理的なハードルと、情報が動かないことにある。

物件の価値を丁寧に見極め、取引は専門家に委ね、最初の一歩を補助金で後押しする。この一つひとつの手当てを積み重ねることで、「負の遺産」になりかねなかった空き家が、地域の資産へと生まれ変わっていくのです。

そしてもう一つ、私が強く感じたことがあります。

空き家が増えていく背景には、「受け継ぐ人がいない」という、いまの日本が抱える大きな課題があります。

荒れていく山も、耕されなくなった農地も、引き取り手のないご遺骨も元をたどれば、すべて同じ一本の線でつながっています。

家族や地域の"つながり"が、静かにほどけているのです。

だからこそ、先人が遺してくれたものを、壊すのではなく、活かす。 その視点を持てるかどうかが、これからのまちの分かれ道になると思います。

福山でも、こうした仕組みをどう根付かせていけるか。

今回の視察で得た学びを、しっかり持ち帰って形にしてまいります。

 

高架化を「あきらめる」勇気  鹿児島駅前で見た、まちづくりの本質

高架化を「あきらめる」勇気 ― 鹿児島駅前で見た、まちづくりの本質

 

 

こんにちは、田口ゆうじです。

先日、総務委員会の行政視察で、鹿児島市を訪れてきました。

九州新幹線の終着駅として超高層ビルが立ち並ぶ「鹿児島中央駅」から、路面電車に揺られること15分ほど。降り立ったのは、かつて鹿児島の「陸の玄関口」として栄えながら、長く静けさに包まれてきた鹿児島駅の周辺です。

1996年の県庁移転、そして2004年の新幹線開業。まちの重心が中央駅へと移っていく中で、この一帯からは都市機能が次々と抜け落ちていったといいます。取り残された時間。——けれど今、そこには確かな再生の物語がありました。現地の職員の方から直接お話を伺い、私は多くのことを持ち帰ることになりました。

 

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「できないこと」を数えるより、「できること」から始める

 

正直に申し上げて、一番心に残ったのは、このまちが変わり始めたきっかけでした。

当初、市と県が描いていた切り札は、鉄道を高架化する連続立体交差事業。

踏切をなくし、分断された市街地をつなぐ。

理屈としては王道の計画です。しかし検討開始から20年近く、事業は進展しないまま。住民の間には「いったい、いつになったら」という声が募っていったそうです。

そして2009年、鹿児島市は大きな判断を下しました。

実現の見通しが立たない高架化にこだわり続けるのではなく、駅前広場や自由通路の整備など、今の予算と時間の中で「手の届くこと」から着手する道を選んだのです。

これは、決して簡単な決断ではなかったはずです。

私たちの世界では、「大きな計画を掲げ続けること」それ自体が、仕事をしている証のように見えてしまう場面があります。

旗を降ろすことは、時に「後退」と受け取られかねません。

それでも鹿児島市が示したのは、その逆でした。理想をいったん脇に置き、目の前でできることに全力を注ぐ。

その現実路線への転換こそが、20年止まっていた時計の針を動かしたのです。

山の手入れと同じだ、と私は思いました。荒れた森を前にして、「全部を一度に整備できないから」と立ちすくんでいては、一本の木も救えません。

今日、目の前の一本に手を入れる。その積み重ねだけが、森を変えていくのです。

 

 

「かんまちあ」に見た、"使われる"公共空間のつくり方

 

再開発の核となっているのが、旧国鉄用地を活用した多目的広場「かんまちあ」です。

年間の利用件数は、およそ14,000件。この数字を聞いたとき、正直、驚きました。

その秘密は、徹底して「使う人」の側に立った設計にあると感じました。

  • 一般的な公園にありがちな細かい禁止事項を設けず、あえて「広場」と位置づけたこと
  • キッチンカー用の排水設備やシャワー室まで備え、興行など商業利用も積極的に受け入れたこと
  • そして何より、広場をA・B・Cのブロックに区切り、同時並行で複数の団体に貸し出せる運用にしたこと

この「区画貸し」という発想が、年間14,000件という驚異的な稼働率を生んでいるのだと思います。

雨の日でも運動会やフットサルができる大きな膜屋根。

足腰にやさしいゴムチップ舗装の、500メートルの散策路。

利用者満足度89%、アクセス満足度87%という数字は、行政が「こうあるべきだ」と押し付けた施設ではなく、市民が「やりたいこと」を実現できる舞台を用意した結果なのだと、実際に歩きながら実感しました。

 

 

名前をつけたのは、地元の小学生だった

 

 

もうひとつ、深く印象に残ったことがあります。

このプロジェクトは、完成品を市民に「見せる」のではなく、つくる過程そのものに市民を巻き込んできたという点です。

2007年から始まったワークショップは、単なる意見交換の場にとどまらず、まちの未来像を市民自身の手でまとめる「まちづくりガイドライン」づくりへと発展しました。

そして「かんまちあ」という愛称。

これは、地名の「上町(かんまち)」と、応援を意味する「チア」を掛け合わせた、地元の小学生のアイデアだと聞いて、思わず頬がゆるみました。

自分たちが名前をつけた場所を、子どもたちは一生忘れないでしょう。

それは、まちへの愛着が生まれる瞬間そのものです。

 

施設が完成した後も、関わりは途切れていません

ワークショップに参加した有志による「上町タウンマネジメント」が、今も駅周辺の清掃活動を続けているそうです。

もちろん、この熱意を一部の方々の善意だけに頼り続けるわけにはいかず、多様な企業や団体を巻き込んだ持続可能な体制づくりが今後の課題だとも、率直に伺いました。

それでもまちを「自分たちのもの」として育てていくプロセスの大切さを、改めて教えられた思いです。

これは、私がいつも申し上げている「つながり」の話そのものでした。

 

 

大きな商業施設がなくても、民間は動く

 

 

鹿児島駅周辺は、大型商業施設の誘致という王道を選びませんでした。

都会的で商業色の強い中央駅とは違う、「市民がくつろぎ、楽しむ場所」としての役割を明確にしたのです。

世界文化遺産や桜島の眺望といった、もともとそこにある資源を、無理なく生かす。

その自然体な姿勢が、結果として民間投資を呼び込みました。

行政が公共空間という質の高い「土台」を整えたことで、駅前の再開発マンション(155戸)は分譲後すぐに完売。

周辺には賃貸マンションやドラッグストアの建設も相次いでいるとのことです。

行政が丁寧に土を耕し、民間がそこに種を蒔く。 

その循環を、身をもって見せていただきました。

 

 

福山に持ち帰りたいこと

 

福山市も、駅周辺のまちづくりをはじめ、限られた予算と時間の中で何を優先すべきか、常に問われ続けています。

鹿児島駅周辺の事例が教えてくれたのは、まちの価値を決めるのは、道路や建物の立派さだけではないということでした。

そこに集う人たちが、どれだけ愛着を持ち、自分ごととして関わっているか。

そのソフトの厚みこそが、結局はまちの底力になるのだと思います。

「大きなインフラが整わなければ、まちは変われない」そう思い込んでしまいそうになる場面は、これからも出てくるはずです。

けれど、鹿児島駅前の風景は、その思い込みに、静かに、しかしはっきりと「否」を突きつけていました。

 

 

今できることから、着実に。

 

立派な計画書よりも、目の前の一歩を。

この視察で得た学びを、福山のまちづくりに、必ず生かしてまいります。

「朝6時」に、人はなぜ集まるのか ― 尾道市倫理法人会 会長として考える“場作り”

こんにちは、尾道市倫理法人会で会長を務めております、田口ゆうじです。

倫理法人会のモーニングセミナーは、早朝から始まります。

まだ多くの人が眠っている時間に、わざわざ家を出て、学びの場に足を運ぶ。

正直に言えば、これは簡単なことではありません。

会長という役をお預かりして、私が一番向き合ってきたのは、この問いでした。

 

 

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「どうすれば、人が“行きたい”と思える場をつくれるのか」

 

 

どんなに立派な理念を掲げても、人の集まらない場は、静かに崩れていきます。

イベントを開いても参加はまばら、声をかけても「忙しい」と断られる。

これは、あらゆる組織のリーダーが直面する、最も切実な悩みではないでしょうか。

先日、かつて「最悪の3年間」を経て、いまや北海道最大級にまで成長したある組織の話に触れました。

整列を促しても誰も並ばず、外で勝手にサッカーを始める始末——そんな混沌から、早朝に人が押し寄せる場へと変えていった。

その「場作りの知恵」に、私は深くうなずかされました。

今日は、その学びを、会長としての自分の言葉で書き留めておきたいと思います。

 

 

1.「1000万円のホームラン」より「100円の体験」

 

 

人を動かそうとすると、つい大きな報酬をぶら下げたくなります。

でも、それは往々にして逆効果です。

「ホームランを打てば1000万円」と言われても、現実味がなければ、人は打席に立ちたくない。

けれど「憧れのドームの打席に立たせてあげる」と言われたら、100円払ってでも立ちたいと思うはずだ——この話に、はっとしました。

人を動かすのは、損得よりも「純粋なワクワク」なのです。

会長として私が用意すべきは、報酬ではなく、「体験したい」と思える舞台

モーニングセミナーも同じです。

義務で来てもらう場ではなく、「あの場に行くと、心が動く」と感じてもらえる場に。

会社も同じで仕方がなく仕事をしているのか

自分から知恵を絞って挑戦して、失敗しても何度も挑戦する喜びを感じながらの仕事か

わくわく感がそこにあるかはとても重要です。

 

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2.「その場所でしか味わえない」文脈をつくる

 

 

「忙しい」という言葉は、多くの場合「面白くない」の言い換えだと思います。

だからこそ、**その場所でしか味わえない“文脈”**を設計することが大切です。

こんな話を聞きました。

ある精肉店の方がイベントに肉を差し入れてくれたとき、普通なら会場で焼いて終わり。

でも、あえて「お前の工場の前でバーベキューをやろう」と提案した。

すると、「そんな面白そうな話があるなら」と、普段は顔を出さない人まで、他地域からも続々と集まってきたというのです。

「肉屋の工場の前」という、そこにしかないライブ感。

理屈ではなく、「面白そう」という磁力が人を動かす。

会を運営する立場として、私はいつもこの“場のデザイン”を考えていたいと思います。

 

 

 

3. 理屈より、「うなぎ」の一皿

 

 

事務的な役員会や会議には、どうしても心理的な“摩擦”がつきまといます。

この「参加する痛み」をどう和らげるか。

ある会で、食事を「うなぎ」にしたそうです。

すると、いつも「忙しい」と言って欠席していた人が、開始前から席に座っている。

「お前、忙しいんじゃなかったのか?」と聞くと、「いや、時間ができました」と(笑)。

これは単なる餌付けではありません。

人の意思決定は、論理より感情に動かされます。

「会議は面倒だが、あのうなぎが食べられるなら差し引きプラスだ」——この直感的な納得感で、参加のハードルを下げる

組織の血流を止めないための、立派なマネジメントなのだと学びました。

 

 

4.「カブトムシの法則」— 人は明るい場所にしか集まらない

 

 

 

会長として、私が最も戒めているのが、場の「陰気さ」です。

「人が集まると明るくなる。

そして、明るいところにしか、人は集まらない。カブトムシだって、暗いところには行かないでしょう」——この言葉に、深く共感しました。

不平不満や深刻さが支配する場所に、新しい人は寄ってきません。

リーダーの最大の仕事は、自らが“光源”になること

失敗さえも笑いに変えながら、「あそこに行けば、何かいいことがありそうだ」という空気をつくり続ける。

倫理でいう**「明朗(あかるく)」**とは、まさにこのことだと思います。

明るさが足りないなら、それはまず、会長である自分自身の明るさが足りないのだと。

 

 

 

5.「人の背中」こそ、最高の教科書

 

 

倫理法人会という場の、本当の値打ちは何か。

それは、きれいな成功談を聞くことではなく、目の前の人の“生きた体験”に触れられることだと、私は思っています。

「横から見たら真っ直ぐ走っているように見える人でも、本人は『いや、俺は斜めに走ってるんだ』と言うかもしれない。

『なぜ?』と聞けば、『風が吹いているからだ』と答える。それは、会わなければ聞けない話だ」——。

商売にも、人生にも、いつも“見えない風”が吹いています。

順調そうに見えるあの人も、実は逆風の中で必死にバランスを取っている。

その「なぜ?」を、直接本人に問える。

整えられた「正解」ではなく、泥臭い「生き方」を分かち合える。

人と人が、直に出会うことにしか宿らない学びが、確かにあるのです。

 

 

 

結び ― 「行く理由」を、つくり続ける

 

 

北海道のその組織も、最初から成功していたわけではありません。

誰も話を聞かなかった混沌の日々を、一つひとつの工夫で塗り替えてきた結果でした。

「行かないと損をする」と思えるほどの体験。

理屈を超えて人を動かす一皿。

そして何より、カブトムシが集まってくるような、明るい空気。

これらを愚直に積み上げることでしか、強い場は生まれません。

倫理法人会で私たちが大切にしている**「明朗・愛和・喜働」**——明るく、和やかに、喜んで働く。

この実践そのものが、実は最高の“場作り”なのだと、改めて気づかされました。

最後に、自分自身への戒めとして、この問いを記しておきます。

「もし明日、朝早くに起きて自分に会いに来てもらうとしたら、何人が喜んで家を出てくれるだろうか」

もし誰も来ないなら、まだ私の“場”は、明るさが足りないのでしょう。

尾道から、そして福山から、人が集い、心が明るくなる——そんな場を、これからも会員のみなさんと一緒につくってまいります。

早朝の学びの場で、お会いできることを楽しみにしています。

 

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